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Selfishly

Selfishly

limitation3





【注】!!

このお話では、ロイは非道で鬼畜な人間となっております。
  part2からは、エド子のキャラも歪んでおります。(平身低頭!)
  
  その点を苦手とする方は、読まずにいてもらえますように。
  ハッピーエンドでも、楽しいお話でもないと思われます。
  それでもお読みになられる方は、ご自身の判断でご了承頂き
  下記へスクロールしてお進みください。
   *性描写もややございますので、未成年者の閲覧はお止め頂けますように。m(__)m 






























・・・ 喩え、外道と堕ち果てても P3・・・




「じゃあ、こっちに入って来てくれよ」
その誘いの文句に、内心首を傾げる。
目線の向こうには少女が立っているだけで、視界に入る範囲にも別に柵も門があるわけでもないのに。
訝しみながらも言われたとおりに足を進め、木立から出て行こうとした。
その刹那。
「・・・っな!」
バチッ!!と鋭い火花が目の前で踊り、思わず後ろへと飛び退いた。
「・・・何だ。あんたでも入れないんだ。
 ――― あいつの徹底振りも困ったもんだよな・・・」
少女は特に驚いた風もなくそんな感想を呟きながら、何もない空間にじっと目を凝らしている。
「――― 向こうの方だな。
 なぁ、そのまま前には進まないようにして、右にずれて行ってみろよ」
指で誘うようにして、少女も左側へと歩き出した。
何が起きたのかも判らないまま、自分は言われるがままに横へと進んでいく。
少女が歩く度に、巻きスカートからはすらりとした白い足が見え隠れしているのに、
見ないようにしようと思っている理性に逆らって、視線は動きを追いかけるように
ちらちらと動いてしまう。
「そこでSTOP!」
視線に気を取られて進みそうになっている足を慌てて止めて、立ち止まった少女と向かい合うような
形で立ち止まった。
「そこ。あんたの右手の前に立っている木の根元らへんに練成陣がないか?」
「・・・錬成陣!?」
「ああ、その木の根元らへんだぜ。ただし、絶対に触れるなよ。
 そこはさっきの警告じゃ済まないからな」
警告? さっき上がった火花の事だろうかと思いながら、慎重に膝を付いて覗き込んでみる。
「――― あるな」
見覚えがある形の、全く知らない文様が刻まれている。
そして、それを目にして先ほどの事も理解できた。
術者が傍に居ないのに、発動する練成陣。
――― 怖ろしく高度な術だ。
が、彼を思えばこんな練成陣も可能なのだろうと納得も出来る。
若かりし頃。焔の銘をもらった彼は、今でもこの国の錬金術師の第一人者なのだから。
そう考え、そして自嘲の笑みが口の端に浮かぶ。

父親に対抗するように、士官学校では錬金術の講座も取ったと云うのに、
教官たちが隠れた嘆息を吐くほど、自分にはその素養が備わっていなかった。
それをこんな処で、またしても差を思い知ることになろうとは・・・。

「何やってんだよ。それ、ちゃっちゃと壊せよ」
あっさりと言われた言葉に、驚いたように目線を上げる。
「素手ではやるなよ? そうだな・・・、ナイフみたいなもん持ってないか?」
「あっ、ああ・・・」
少女にそう指示され、ポケットに忍ばせてあったナイフを探り出す。
これをどうすれば・・・と思案していれば。
「それで十分。それをその練成陣の一箇所に投げて刺してみろよ」
「投げ・・、刺す?」
「そう。ほら、さっさとやんないと、日が暮れちまうだろうが」
横柄な態度にムッとさせられながらも、彼は狙いを澄ましてナイフを投げ刺す。
「・・・!!」
錬成陣に切っ先が触れた瞬間、ジュッと嫌な音が上がりナイフは次の瞬間に
どろどろになって焼け落ちたのだった。

――― どれ程高温なら、あんな風に熔かせると云うのだ・・・。

背筋にはぞっと震えるような悪寒が走る。

「上手くいったみたいだな」

彼の意識を戻したのは、明るい少女の声だった。

「う、まく?」
頭を働かすには、先ほどの衝撃から覚めておらず、呆然と言葉を繰り返した。

「ああ。ほら見ろ、俺も出れるようになってるぜ」

その少女は先ほどの光景を何とも思わないのか、恐れの無い足取りで彼へと近づいてくる。
近づいて見れば見るほど――― その少女は美しかった。
光を弾く髪は、陽光よりも純然たる黄金を称え、
瞳は。・・・信じられない程、透明度の高い金色の瞳だ。
すらりとした肢体は若さを誇るように、しなやかに舞うように動いている。

あまりにじっと見惚れていた所為でか。

「なぁ、あんたどっか。耳でも悪いんか?」
小首を傾げて尋ねてくる少女に、青年ははっとなって慌てて否定する。
「べ、別に悪い処等ない! ただ、―― そのぉ、少し驚いただけで・・・」
そんな青年の言葉をどう取ったのか、ふう~んと気の無さ気な相槌を返すと、
少女はクルリと向きを変えて歩き去っていく。
「あっ・・・!」
思わず呼び止めようとして、次の瞬間躊躇いが込み上げてくる。

呼び止めて・・・それでどうすると?
先ほど彼女が言っていたように、――― 実の父親の囲われ者を相手にする?
僅かな躊躇は、次の少女の言葉で霧散した。

「ほら、早く来いよ。俺の相手をしてくれるんだろ」
そう呼びかけた癖に、少女は歩みを止める気配も。
その疑問系の言葉にも、自分の言う事に逆らうはずが無いと思っているのが伝わってくる。
相手がこれだけ悪ぶれないせいで、彼の決心も固まった。
「ああ・・・、そうだな」


*****

てっきり家の中に招き入れられるのかと思っていると、少女は玄関前の平地で彼に向き直ってくる。
「じゃ、始めますか」
明け透けな開始の宣言には、思わず周囲を見回してしまう。
外で始めようと云うのか・・・。と戸惑うのは当然だろう。
別にそれが普通ではなくとも、特に異常だとは思わないが・・・。
――― こんな隠せるような物が無い場所で・・・。
そんな思いが胸に浮かぶ。
青姦をするにしても、もう少し場所を選ぶ方が良いのではないだろうか。

と思い描いた彼の戸惑いなぞ少女は頓着をせず、さっさと巻きスカートの腰紐に
手をかけたと思うと、恥じらい一つ見せずに見事、堂々と脱ぎさった。
脱ぎさったのだが・・・。

青年が呆気に取られたのは、赤裸々な少女の肢体を見たからではなく。

「さて。どこからかかって来てもいいぜ」
独特の体勢を取って、少女は低く構えて挑んでくる。

巻きスカートの下には、ハーフパンツが掃かれていた。
彼女が、これも邪魔だと脱ぎ捨てたシャツの下にはタンクトップだけの
上半身があり、確かに目のやり場に少々、困るのではあるが。

なかなか体勢を取らない青年に焦れたように、少女は構えを解いて苛々とした様子で
足を踏み鳴らす。

「何だよ。ここまで来て怖気づいたのかよ。
 ほらとっとと掛かってこいよ。折角の組み手の相手が捉まえられたんだ、
 ――― 逃がさねぇぜ」
極悪人のチンピラのようなセリフを、可憐な少女が嬉しげに吐き出してくるギャップ。
青年は米神を押さえて、軽い頭痛を感じ始めた頭に手をやる。

「――― 相手とは、・・・組み手のことだったのか」

落胆すれば良いのか、安堵すれば良いのか。

「当たり前だろ! ここにはロイしか入って来れないし。・・・あいつは、俺の
 相手を嫌がるからさ。そこに都合よく現れたんだ。是が非でも相手してもらうぜ」

構えなおした少女が、にんまりと口の端に弧を描いて見せてくる。

「・・・馬鹿らしい。私は軍人だ。君のような少女の・・っ!」

断わろうとした言葉は、頬を掠めるように繰り出された拳の風圧で止まる。

「それこそ望むところだ。普通の奴に相手を頼むわけがないだろうが。
 ――― あんたの動きは格闘をこなしてる奴の者だ。
 多少程度は相手になるだろうと踏んでのことさ」

――― 何と言った、この少女は・・・?

軍人と聞けば怯むと思っていたのに、多少程度は相手に・・・?
言質の引っかかりに気を掛けられていたのは、僅かな間だけだった。
第二波のように繰り出された蹴りが、空の刃となって飛んできたからだ。
辛うじてその蹴りを避けると、少女は嬉しそうに笑みを浮かべ。
「ふ・・ん。ちょっとはやれそうじゃん」
と、爛々と瞳を輝かせて青年を見たのだった。



ヒュッと鋭い空気を裂く音が耳の傍を掠める。
防戦一方に追い込まれてから随分と経つ。
信じられない事ながら、少女の身体能力は青年のそれを遥かに凌駕している。
軽やかな体から出される拳や蹴りは、スピードも重さも申し分がなく、
そして・・・動きが尋常ではないのだ。
青年とて武道で鳴らしている軍の精鋭だ。たかが少女に引けを取るような鍛え方は
して来なかった筈なのに、1手さえ報いることが出来ない状態に追い込まれている。

「どうした。もうへばったのかよ」
からかうように言葉を掛けてくる相手は、息さえ切らさず汗もかいていない。
対して自分は、既に満身創痍の有様だと云うのに・・・。

「く、っそう!」
力を振り絞っての最後の攻撃も、あっさりと躱されるとスローモーションのように
少女の足が繰り出されたのを見つめていた。
酷くゆっくりと動いて見えたと云うのに、青年は避けるどころか逃げを打つ事さえ
出来ずに・・・、モロに受けたのだった。



「大丈夫か?」
心配そうな声に閉じていた目を開けてみると、自分を覗き込むようにしている少女の
姿が飛び込んでくる。
そうして彼は、自分の失態に気づいた。
――― 意識を失うと云う。

「ごめん・・・手加減したつもりだったんだけどさ」
罰が悪そうに言い訳をされても、余計に傷つくだけだ。
「やっぱ、久しぶりだと勘が狂うよなぁ。
 頭の後ろとか痛くないか? 結構、派手にぶっ飛んだようだからさ」
その言葉で、自分が覗き込まれている体勢の理由が判った。
大丈夫だと言おうとして、思わず喉が詰まる。
息が苦しいからではなく、眼前に近づいた少女の体躯の所為だ。
「あー、やっぱ、たん瘤出来てるぜ」
頭を抱えるようにして手を後頭部に回してきた少女が、困ったような声を上げている。

が・・・、青年はその言葉どころの騒ぎではない心情だ。
ふくよかと言うほどではないが、小振りではあるが形の良い張りのある乳房が
鼻頭に突きつけられているのだ。胸をざわめかさずにはおれない。

・・・?

白い胸の谷間に視線を吸い取られていた彼の視界の片隅に見て取った色に気を惹かれる。
どこにも怪我など見受けられないような気がするが、ちらりと見えたそれは深紅だったような・・・。

思わず目を凝らして、再度見ようと頭を少しもたげた瞬間。

「――― 一体、これはどういう状況なんだ」

声を荒げているわけでもないのに、心の臓に刃物を刺されたように
心身が硬直する。

「あれ? 帰ってきたんだ、こんな時間に」

場違いな明るく弾んだ声が、その声の主に言葉を返している。

「・・・エド、聞いたのは私の方が先だろ?」
嘆息と共に呟かれた言葉には苦笑が滲み、先ほどの険は感じられない。
「別に。ちょっと暇だったんで、相手してもらおうかと思ってさ。
 あんたの息子なんだろ? いいじゃん、他人じゃないんだからさ」
朗らかな声には、申し訳程度の罪悪感も感じさせない。

が、青年を驚かせたのは、そんな彼女の態度ではない。
彼女の言葉の方にこそ、青年を目覚めさせるような威力を発揮させたのだ。

――― 誰もが他人事のように、自分の父親のことを語る。
    実の父にさえ、赤の他人のように扱われたと云うのに・・・。

    この少女は、何と言った・・・?

    『他人ではない』と? そう言ったのだろうか・・・。

「彼とは赤子の頃から会った事も無いんだ。まるっきり関係がないとは思わないのかい?」
渋面でそう窘めてくるロイに、エドと呼ばれた少女は納得できないと云う表情を向ける。
「じゃあ、あんたは俺の感覚がおかしいとでも言うのかよ?」
「――― そうは言わないが・・・」
「当然だな。こいつはあんたの分身だ。俺には判る。だから他人じゃない。
 俺の言ってる事は間違ってないよな」
どうだと詰め寄るエドに、ロイは深い嘆息を吐きながら返す。
「・・・間違ってない。君の言っている事は正しい」
諦め切った声がそう伝えるのを、青年は信じられない想いで聞いていた。

肉親の情をもってさえ動かせなかった相手が、自分の娘程度の少女に言い負かされている。
そして――― 息子と認める言葉を言ったのだ。

「だろ?」

勝ちを誇る相槌を返しながら、エドは嬉しそうに笑った。

青年は、その少女の美しい笑顔を惚けたように見つめていたのだった。












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